一般に夏ミカン缶詰を製造する場合には脱苦味をすることが多いが、最近ではナリンギナーゼを使用する方法が開発応用されるようになってきた。そこでわれわれは現在大阪市立工業所究所および田辺KKで新しく開発中の酵薬剤を用いてナリソギナーゼ、フラボノイドグルコシダーゼの特性を別個に調べると共にナリンギン、プルニンの分離定量を行うことを目的に実験を行ったので報告する。
1)ナリンギンとプルニンの味は異なっていてプルニンの味は酸味に近く、夏ミカンのように酸味の強いものではナリンギンをプルニンまで分解すれば十分脱苦味出来ることがわかった。
2)三種の酵素剤のpH活性、耐熱性、糖阻害の影響をそれぞれナリンギナーゼ活性、フラボノイドグルコシダーゼ活性に分けて調べた。その結果これらの酵素剤ではpH、糖の影響等でフラボノイドグルコシダーゼ活性が特に抑制され易く、ナリンギンは完全分解されずにプルニンの形で蓄積される場合がかなり多いという事実を確認した。したがってこのような種類のナリンギナーゼ剤を用いて脱苦味を行う場合にはDavis値のみでは判定が困難で、ナリンギソ,プルニンの分離定量を行う必要のあることが明らかになった。
3)ナリンギン、プルニンの分離定量法としては酢酸エチル分配法が簡便で最も適していることがわかった。
- 著者
- 下田 吉夫、奥 正和、澤山 善二郎、松本 熊市
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,108-116(1965)