2.缶詰の内面腐食に関する研究
アスパラガス缶詰の缶内腐食と、シスチン、システィンによるスズの溶出との関連性

アスパラガス缶詰に認められるスズの多量溶出、ならびに黒変化 の原因物質、およびシスチン、システィンによるスズの溶出、黒変化反応について検討し、次のことが判明した。

1.アスパラガスの腐食因子は凍結乾燥処理によっても長期間安定で、熱水、熱メタノールに容易に抽出される。

2.活性炭、アルミナ等には吸着され難く、陽イオン交換樹脂には吸着されない。

3,酸性で安定であるが、アルカリ性域で分解される。

4.スズ溶出量と黒変化度は比例する。

5,メチオニン、メチルメチオニンスホニウム塩は何れもスズ溶出促進作用も黒変化もおこさない。

6.シスチンは酸素の存在しない場合にもはげしくスズを溶解するが、黒変化は酸素存在下の場合に比し少ない。

7.システィンは酸素の存在下ではじめてスズを溶解し黒変化をおこす。

8.アスパラガス中にはかなりのシスチン、システィンが含有され、これが缶詰の内面腐食の原因の一つであると考えられる。

著者
堀尾 嘉友、吉田 千恵子
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,10-19(1971)

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