Bacillus subtilisは容器包装詰食品において,耐熱性の高い菌株が加熱殺菌後も生残する殺菌不足型と,殺菌工程後に漏洩箇所から侵入する二次汚染型の両方の形式で変敗を引き起こす.事故原因を推定するには耐熱性評価が必要であった.耐熱性の高い菌株を迅速に鑑別および検出するための指標となる遺伝子を探索するため,次世代シークエンサーを用いたゲノムスケール配列解析を行った結果,120℃レベルの殺菌を生残する高度に耐熱性の菌株とおよび110℃レベルの耐熱性の菌株ではいずれもポリケチド合成系酵素群(PKS)が欠失していた.環境由来の耐熱性の低い菌株の菌株ではほとんどがPKSを保持していたため,PKSの欠失はB. subtilis耐熱性菌株に汚染された原料を排除するための検査における検出指標として有望なものと考えられた.
- 著者
- 遠田 昌人
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書,31,51-55(2016)