LC/MSを用いたβ-リパーゼ阻害活性試験法

目的

β-リパーゼは中性脂肪(トリグリセリド)のエステル結合を加水分解する酵素です。その働きを阻害すると体内への脂肪吸収を抑えられることから、阻害活性を持つ食品が求められています。一般に阻害活性試験は、蛍光標識を持つエステル化合物(オレイン酸4-メチルウンベリフェロン)を加えた食品試料中で酵素反応させた時の4-メチルウンベリフェロン(4-MU)の生成量を蛍光測定し、阻害率を計算しています。私達はこの手法を用いて柑橘果皮水抽出物のβ-リパーゼ阻害活性評価を試みていましたが、試料由来成分の蛍光が非常に大きく、値が不正確になっている可能性が示されました。そこで本研究では、LC/MSにより4-MUを直接定量することで、β-リパーゼの阻害率を計算する手法を検討しました。

結果

4-MUは、ポジティブでもネガティブイオンモードでも逆相カラムを用いることで感度良く検出されることを確かめました(図1)。また、検量直線性は0.01~1ppmの範囲内で蛍光法とLC/MS法で同等でした。次にモデル試料や柑橘果皮を用いて本手法の有効性の確認試験を行いました。カテキンを用いた試験では、両方の手法で同程度の阻害率が観測されました。柑橘果皮水抽出物を用いた試験では、ユズ・グレープフルーツでは蛍光法とLC/MS法で同程度の阻害率が得られた一方、レモンなどいくつかの試料ではLC/MS法で蛍光法よりも低い阻害率が算出されました。この結果は、蛍光を持つ試料において蛍光法ではβ-リパーゼ阻害率が過大評価される可能性を示しており、LC/MSを用いたβ-リパーゼ阻害活性試験の有用性を示唆されました。

2016-LCMSLipaseInhibition-fig1.png

図1 4-メチルウンベリフェロン(4-MU)の抽出イオンクロマトグラム

年度別記事一覧

カテゴリ一覧