背景・目的
イチジクは古来より食材として、また医薬品として人類に利用されてきた歴史があります。しかし、含まれる成分や健康への影響については、まだ十分には解明されていません。このようなイチジクについて、我々は含まれている機能性成分や期待できる健康増進機能等を探索しています。今回は第1回として、これまでに明らかとなった機能性成分の特徴について紹介します。
結果
(1)葉に含まれる機能性成分
ポリフェノールについては、ルチンとクロロゲン酸が含まれることは知られていましたが、カフェりんご酸も多く含まれることが分かりました(1)。カフェりんご酸とルチンは、ビタミンCやカテキン類と同等の抗酸化力(スーパーオキシドラジカル消去活性)を持っています(表1)(1)。これらの含量は新梢が伸びる5〜6 月頃の若葉に多い事も分かりました(図1)(2)。また、これらは葉を加熱して茶に加工しても残存します(3)。
図1.イチジク葉の主要ポリフェノール(カフェりんご酸、ルチン)とその含量季節変化
表1.カフェりんご酸、ルチンの抗酸化力
図2.果実に含まれるトリゴネリン(左)、とピペコリン酸(右)
(2)果実に含まれる機能性成分
カルシウムを中心としたミネラルや食物繊維、ポリフェノールの一種アントシアニンを含んでいることが知られています。他の成分を探索した結果、ピペコリン酸やトリゴネリンといった成分を含むことが分かりました(図3)(4)。トリゴネリンはコーヒーなどにも含まれており、糖尿病や肥満の緩和作用の可能性が示唆されています(5,6)。現在、両物質が単独または複合でどのような機能を示すのかを調査しています(残念ながら抗酸化力はどちらもありませんでした)。
図3.プソラル酸グルコシド(左、前駆物質)と加水分解で生成されるプソラレン(右)
参考文献
(1) T. Takahashi et al,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2014,62,10076-10083.
(2) 高橋 徹・沖浦 文,東洋食品研究所研究報告書,2013,29,31-36.
(3) 高橋 徹・沖浦 文,園芸学研究,2011,10(別冊1),253.
(4) 高橋 徹・他,園芸学研究,2014,13(別冊2),312.
(5) O. Yoshinari et al,Bioscience Biotechnology and Biochemistry,2009,73,1033-1041.
(6) A. E. van Dijk et al,Diabetes Care,2009,32,1023-1025.