6.缶詰による干柿の貯蔵

干柿は乾燥され作られたものであるが、一般に言われる乾燥品とは異なって含有水分量はずっと多い。従って、従来保存上の障害となったのは黴の発生であって、少し気温が高くなるとその害を受け易い。往年輸出する干柿が船中の暑さの為に黴を生じたという事例もある。古くから親しまれた干柿が主として暮れから正月に掛けてのみ賞味されるのは伝統的な習慣による事もあろうが、このように保存に困難な為と思われる。

筆者は甲州百木干柿をドライパツクしたものについて7-9ケ月貯蔵した結果、硬く乾燥された干柿(水分20%以下)は缶詰製造時と変らなかったが、水分の多い軟らかい干柿は、外観は良いが、黴が発生していないものでも風味に於いては全く変化していた。この変化は夏期の高い気温に長く置かれた為と思われる。従って干柿として最も賞味される軟質のものは室温に貯蔵する事に無理があると考えられたので、低温貯蔵において少しばかりの試験を行った結果を報告する。

著者
鈴木 保治
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,2,61-70(1952)

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