蜜柑缶詰用空缶の製作材として電気メッキブリキ板と熔融メッキブリキ板との適性比較を行った。
1)缶胴上部に発生の液線腐食
残留酸素存在下で、果実酸の溶解作用により液面に発生したと考えられる液線腐食は、熔融メッキブリキ板では合金層を露呈した細線程度に止まったが、電気メッキブリキ板では速かに脱錫作用が下底に向って発展した。塗装缶及び缶胴の両端塗装が液線腐食の阻止に有効であった。
2)合金層の剥落現象
電気メッキブリキ板の無塗装缶において、遊離錫が完全に消去した後に、錫一鉄合金層が剥落して来る現象を認めた。酸の侵蝕が合金層と鋼板との界面に沿って進行し、分離したものと考えられた。
3)鉄面に発生のフェザリング
電気メッキブリキ板ではフェザリングの模様が小さく、余り目立たぬ様に思えたが、比較的速急な脱錫作用でかなり早く消失した。
4)全面塗装缶おける局部腐蝕
塗装缶では、塗膜に生じた亀裂や傷跡に局所腐蝕が発生したが、無塗装缶では認められなかった。これは第一錫の露出鉄面に対する腐蝕阻止作用と考えられた。局部腐蝕は電気メッキブリキ板を使用した塗装缶で顕著に発展し早期の水素膨張缶発生の原因となった。
- 著者
- 志賀 岩雄、木村 圭一
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,8-33(1956)