胞子の生存期間についての発表はないので筆者らは寒天培養基に多数胞子を接種して発芽状態を観察し、長期間保存した胞子の発芽力と新鮮な胞子のそれを比較して胞子の寿命を推定した。供試の保存胞子は採集直後より塩化カルシウム乾燥器中にて2.5℃の冷 室に保管した。培養基はブドウ糖を主成分とする寒天培地で105℃ 60分殺菌して使用した。増養温度は25℃とした。
新鮮胞子の発芽 新鮮胞子の発芽試験は4子実体から夫々胞子を採集して行った。発芽率は胞子接種の全試験管に対する胞子の発芽した試験管の数を以て定め接種胞子数に対する発芽胞子数によったものでない。発芽月日は発芽した胞子群を最初に確認した日とした。胞子の寒天培養の結果は新鮮胞子、保存胞子とも接種後10日前後に発芽するものが多かったが、供試の保存胞子中の二種は発芽に永い日数を要した。発芽率は保存により減少をみなかった。第2表胞子別No.3の胞子は1カ年以上生存したことが確実である。
- 著者
- 高橋 善二郎、岡 信子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,61-68(1956)