果実缶詰の注入シラップに少量のクエン酸を添加した場合のpH 価の移動とそれに伴う香味の良否について試験したので報告する。
1.バートレットペアーは元来pHコントロールの必要性は認められないが、0.1%位の添酸が香味は良かった。(pH=3.95)
2.廿世紀梨は殺菌技術上pHコントロールを良策とするも、香味において、無添酸の方が優れている。(pH=4.45)
3.無花果のマスイ・ドゥフィンは0.2%添酸してもpH=4.6位で、果実缶詰の内では殺菌程度をかなり高くする必要がある。香味も0.2%位の添酸が優れていた。
4.レッド.チェリーは殺菌技術上pHコントロールを良策とするも、香味においては無添酸の方が優れていた。(pH=4.0〜4.13)。
5、田中枇杷は酸味の強い枇杷であるから、pHコントロールの必要性は認められないが、香味の上では0.1%位の添酸が好ましいと思われた。(pH=3.85〜3.90)
6.大久保白桃はpHコントロールが良策で、0.2%位の添酸が香味においても好ましい。(pH=4.15〜4.20)
7.黄肉桃の農林一号は元来pHコントロールを必要としないし、また添酸した方が却って香味を損じた。無添酸のPhは3.72〜3.75であった。
- 著者
- 澤山 善二郎、長渡 和子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,131-137(1956)