背景・目的
食事を楽しむ上で、食品の硬さは重要な要素の1つと言われています。実際、様々な硬さのパイナップルを用意し、20人に食べてもらった結果、軟らかくなるに従い許容できないと回答する人が増加するという結果が得られています。
一般に加工食品の硬さは、調理や保存中に変化するので、もしその変化を抑えることができれば、より長期間品質が高い食品を提供できるようになります。また、近年増加している介護食品では軟らかいことが重要なため、軟らかくする方法が必要です。このように、硬さを自在に制御することが、食品業界で求められています。硬さを制御するためには、食品の硬さがどのような因子によって構成されているか明らかにする必要があります。そこで我々は主に野菜・果実をサンプルに、硬さを構成する成分の調査を行っています。
結果
パウチ詰のパイナップルシラップ漬は、常温での賞味期間が半年〜1年間で販売されていますが、その期間内に徐々に軟化することが分かりました(図1)。その原因としてペクチンに着目し、50℃で保存したパイナップルシラップ漬中のペクチンを水、ヘキサメタリン酸、塩酸の順で分画後、残りを濃硫酸で全量抽出し、それぞれのペクチン濃度を調べました。
その結果、ペクチンのうち、濃硫酸抽出画分に含まれるペクチン(ヘミセルロース・セルロースなどの多糖類と結合し、不溶化したペクチン)が、保存に伴い減少しており(図2)、その濃度と硬さに高い相関があることがわかりました(r2=0.91)。本結果から、多糖類との結合により不溶化しているペクチンの水溶化が、保存中におけるパイナップルシラップ漬の軟化の原因と考えられます。現在は、ゴボウなどの野菜を対象に、硬さを構成する成分の調査を試み、その結果を基に硬さ制御法の開発を目指しています。
図1 各保存温度におけるパイナップルシラップ漬の硬さの経時変化
図2 50℃保存におけるパイナップルシラップ漬の各種ペクチン量の経時変化