ほぼ等質の蜜柑を使用し、同等の条件下で缶詰に製造し、且つ長期に亘って貯蔵した缶詰蜜柑の液汁の着色度と、Hydroxy Methyl Furfuralの含有量とについて試験し、以下の如き結果を得た。
1.エナメル缶より得た液汁は、無地缶より得た液汁よりもその着色度は著しく大であった。
2.HMFの含有量が、着色度が少ない無地缶よりの液汁において却って大であるらしい結果を得た。
3.無地缶より分離した液汁について試験した所では、好気性環 境に置くと、嫌気性環境に.置いた場合に比較して、きわだって着色度を増すことが見られ、この場合に於ける着色度の増大に酸素の関与が決定的であることが認められた。
4.しかも着色度を増大したサンプルにおいてHMF含量の低下の起るらしい事が認められた。
5.前項3及び4に記載の結果から無地缶と、エナメル缶との間 において液汁の着色度及びHMF含量に差違の生じた理由が説明出来る。
6.蜜柑確詰の液汁の着色物生成にHMFが先駆体としての作用を有すること、並びにHMFより着色物の生成過程において酸素が関与するらしいことが推定出来る。
- 著者
- 志賀 岩雄、木村 圭一
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,48-54(1956)