ビワ(田中種)の生鮮果実,缶詰製造直後,保存した缶詰の揮発性成分の組成について検討した.揮発性成分は減圧連続蒸留抽出法で調製し,キャピラリーカラムGC-MSで78成分を同定し,Flavor dilution factor (FD factor)をGC-olfactometly (GC-O)による,Aroma extract dilution analysis (AEDA)により測定した.AEDAにより生ビワの香気と缶詰の香気に寄与している成分は,ビワ生果で15成分,缶詰で19成分であった.ビワ生果の香気に最も寄与する成分はphenylacetaldehyde (FD factor=256)であった.これに加えて,FD factor=64である,hexanal,(E)-2-hexenal,hexanoic acid,β-iononeらがビワ生果の香気に重要な役割を果たす成分であった.一方,缶詰の香気に最も寄与する成分は,β-ionone(FD factor=256)であった.室温にて3ヶ月間保存するとfurfural (FD factor=4)と5-methyl-2-furfural (FD factor=1)がGC-Oで感知された.37℃で3ヶ月間保存後には,furfuralのFD factorは64まで増加した.
- 著者
- 高橋 英史、隅谷 栄伸、稲田 有美子、森 大蔵、中野 長久
- 出典
- 東洋食品工業短期大学・東洋食品研究所研究報告書,23,65-74,(2000)