2020年度研究助成 (2021年度研究実施)
近年のコロナウイルスに代表されるような,人体に有害なウイルスの混入は,食品の安全管理において極めて重要な問題である.もし食品サンプルにおけるウイルスの混入を迅速,かつ簡便に評価することが可能な高性能センサーが開発できれば,これらの問題を解決する上で極めて強力なツールとなり得る.本課題では,鋭敏な応答性,高い生体適合性を兼ね備えた,リン脂質型フォトニック構造体を利用し,高感度のウイルス認識センサーの開発を目指した.本研究課題におけるフォトニックセンサーは市販されているリン脂質を水に分散させるだけで簡便に調整可能であり,高い実用性を持っている.また,標的に認識する抗体を変化させることで,用途に合わせて様々ウイルスに対するセンサーを設計することができる.フォトニック構造体における周期的な微細構造は光を選択的に反射させ,色素を含まないにも関わらず発色する(構造色).このようなフォトニック構造体から反射される光は,従来の色素分子のように退色することなく,半永久的に使用できるため,センサー材料への応用が期待されていたものの,従来のフォトニック構造体は剛直な金属を構成要素としているため,応答性が低く,センサーへの応用は限定的であった.
食品の品質管理を目的としたフォトニックウィルスセンサーの実現
申請者が発見したリン脂質フォトニック結晶を利用し,ヒドロゲルセンサーを開発した.フォトニック結晶内包ヒドロゲルを作成し,標的を添加すると標的に応答した構造色変化が誘起された.本課題のフォトニックセンサーは従来のフォトニック結晶と比べて10 倍以上の感度で標的を認識することが明らかになった.
- 所属
- 東京農工大学 工学部
- 著者
- 内田 紀之
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 34, 233-234 (2022)