2020年度研究助成 (2021年度研究実施)
ウイルス感染症を未然に防ぐためには,体内に侵入した際に迅速にウイルスを攻撃し,排除するための免疫機能を高めることが重要である.我々の研究室ではこれまでに,信州の伝統野菜である野沢菜の免疫賦活効果について明らかにしてきた.本研究では,野沢菜の樹状細胞を介した抗ウイルス免疫賦活効果の検証およびそのメカニズムを明らかにすることを目的とした.野沢菜の抽出物を樹状細胞に添加したところ,抗ウイルス免疫において重要なIFN-βのmRNA発現が増加した.また,野沢菜の活性成分は,Toll-like receptor 4(TLR4)を介してIFN-β産生を誘導することが示された.さらに,野沢菜の抗ウイルス効果を検証するため,野沢菜で処理した樹状細胞をインフルエンザウイルスに感染させ,細胞中のウイルスM タンパク質の遺伝子発現をqPCRにて解析した.その結果,無刺激と比較して野沢菜の添加によりウイルス由来RNA量の有意な減少が確認された.以上のことから,野沢菜はTLR4を介してIFN-βを産生し,抗ウイルス効果を有することが示された.将来的にはヒト介入試験を行い,野沢菜の摂取による抗ウイルス効果について証明したいと考えている.
- 所属
- 信州大学 農学部
- 著者
- 田中 沙智
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 34, 241-246 (2022)