今から略35年前に、筆者が樺太に赴きタラバガニを充填試作したアルミニウム缶について評価した。
内容物の外観は、黒変の発生がなく、若干青変肉ができていた。
全般的な肉色は、心持ちクリーム色に変化していた。赤黄色の着色部の色素が若干その付近の白肉中に渗透しているのが見られた。
開缶後の缶内面の状態は、淡い斑紋が見られたが表面はなめらかで、腐蝕による粗面が感じられなかった。
以上記載のごとくタラバカニのアルミニクム缶詰は1缶だけの所見ではあるが、35カ年という長期の保存に堪え、なお4.2インチの真空度を保持し、内容物は外観の変化は甚しいものでなく、匂い、pHとも略正常に近く、アルミニクムの腐蝕量の意外に少なかったことは注目すべき興味のあることであった。
- 著者
- 志賀 岩雄
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,125-126(1963)