44.茸類の有機酸組成について

有機酸は茸類の物質代謝において重要な役割りを果しているが、缶詰食品としても子実体に含まれている各種有機酸が、風味に重要な影響を与えるものと考えられるので、生鮮茸および市販茸水煮缶詰中に含まれる有機酸組成およびその分布について、検討した結果を報告する.

1.茸類の有機酸組成としては、いずれも8種類検出し、リンゴ酸およびフマール酸が量的に主要な有機酸であった。茸水煮缶詰では缶詰処理工程中の有機酸の損失が大きく、また保存中の液汁部への溶出も著しく、従って風味の低下を来たした。

2.茸の低温処理によってマッシュルームでは、リンゴ酸が減少するが、シイタケでは増加し、著しい対象を示したが有機酸の減少の原因にはならなかった。

3.茸水煮缶詰製造工程中の有機酸の損失を防ぐことによって風味 の良好な製品を得ることが出来ると推定された。

著者
橋本 一哉、磯部 信昭、高橋 善次郎
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,369-374(1967)