カラギーナンから非常に耐熱性の芽胞を形成する好熱性偏性嫌気細菌を分離した.
これらの細菌は生物性状から2群(A群,B群)に分けられ,A群の細菌は発酵によって主に炭酸ガスと乳酸を産生する.また,ミルクを凝固し,亜硫酸塩を還元して硫化水素を産生する.また,増殖至適温度は65℃から70℃であった.糖の分解能など生物学的諸性状からA群の細菌はC.thermohydrosulfuricumと同定された.しかし,B群の細菌は生成有機酸が酢酸である点はC.thermaceticumに類似するが,ガス産生能,亜硫酸塩の還元,糖の分解能,至適温度などの点が異なり結局同定出来なかった.
このようにカラギーナンからF0が30以上の殺菌でも生き残るガス産生の好熱性細菌が分離されたことは,この原材料を使用して製造した低酸性飲料缶詰を加温販売する場合には膨脹変敗になる可能性があるので注意して製造しなければならない.
- 著者
- 遠田 昌人、池上 義昭、中尾 マリ、村山 寿美子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,18,85-92(1990)