茶飲料の機能性成分であるカテキン類の安定性に及ぼすpHと加熱温度の影響を速度論的に検討した.(-)エピカテキンの加熱反応は主に異性化であり,pHが5.0以下のとき加熱殺菌温度で見かけの1次反応に従うが,6.0以上では複雑な挙動を示した.緑茶浸出液中で(-)エピカテキン,(-)エピガロカテキン,(-)エピカテキンガレート及び(-)エピガロカテキンガレートの95℃以下における見かけの速度定数は1次反応に従い,そのアレニウスプロットはいずれのカテキン類でも82℃近傍で上に凹の屈曲点を社し、屈曲点から高温側で活性化エネルギーは著増した.L-アスコルビン酸添加で反応は抑制きれたが,屈曲点は同様に存在した.茶飲料中のカテキン類の安定性はこの屈曲点温度に支配される.
- 著者
- 小松 美博、末松 伸一、久延 義弘、西郷 英昭、松田 良子、原 京子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,20,89-96(1994)