2.クリ果実の生長とひびの生成

  1. 胚のう母細胞から胚の成熟期にわたって,クリ果実の生長と表面のひびの生成を観察した.
  2. 6月上中旬,雌花の開花時には総苞内に既に3個の小さい鬼皮があり,各鬼皮の上部には約15個の倒生胚珠が見られ,7月上旬にそのうちの1個のみが肥大した.
  3. 胚珠内では,6月下旬までに胚のう母細胞が分裂して,胚のうが形成され,その後受精して,7月中旬には球状胚が生成された.
  4. 球状胚はハート型になって,左右の珠皮に沿って伸長し,やがて左右の胚片は内部に向かって肥大し,互いに接するまで生長して2枚の子葉を形成した.
  5. 2枚の子葉が隣接する境界は外観的にはひび状の線に見えた.果実によっては胚軸直下部に空隙や複数の境目のひび状の線があり,それらは果実表面に達し,幼根部位につながっていた.
  6. 以上から,成熟果実表面のひび状の線は胚の生長過程で生成することが判明した.
著者
宮崎 正則、奥 正和、佐藤 宏、高橋 徹
出典
東洋食品工業短期大学・東洋食品研究所研究報告書,22,13-19,(1998)

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