5.経口摂取可能なカキ果皮抽出物の乳癌由来MCF-7細胞に対する影響

カキ果実の果皮は果肉よりも,カロテノイドやポリフェノールなど機能性成分を高濃度に含んでいるが,ほとんどが廃棄されている.そこでカキ果皮を有効利用するため,食品として利用できる抽出物の調製を試みた.カキ果皮から95%エタノールを用いて抽出液を調製し,それから水溶性抽出物(Ew)と4 種類の脂溶性抽出物(E1〜4)を得た.水溶性抽出物にはポリフェノールが,脂溶性抽出物E2にはβ-クリプトキサンチンが,他の抽出物よりも多く含まれていた.乳癌由来MCF-7細胞の細胞増殖に対する,これら抽出物の影響を調べたところ,水溶性抽出物Ew は培地への添加量が33.2μg/mlの時に細胞増殖促進活性を示した.一方で,脂溶性抽出物E2では,培地への添加量が33.2μg/mlの時に細胞増殖阻害活性を示した.以上の結果は,カキ果皮から得られた抽出物に機能性食品素材としての可能性があり,カキ果皮を価値のあるものとして有効利用できる可能性を示唆するものである.

著者
井土 良一、高橋 英史、稲田 有美子
出典
洋食品研究所 研究報告書,28,33-37(2010)

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