エビの加熱による組織構造変化と物性変化の解明を目的とした.実験には殻剥き後の生のウシエビPenaeus monodon を用いた.エビの加熱条件は40, 50, 60, 70, 80, 90, 100℃の温水中でそれぞれ30分間ボイル,およびレトルト殺菌温度帯の変化を調べるため121℃の食用油で30分間加熱と,121℃(F0=6)のレトルト殺菌(ドライパック)とした.電子顕微鏡観察,色調,ドリップ量,ヒドロキシプロリン量を測定し,非加熱のエビを対照として考察した.80℃でタンパク質の変性は終了した.油加熱品とレトルト殺菌品を比較すると,電子顕微鏡画像に大きな違いは見られなかったが,レトルトの方が食感はボソボソと軟らかく,ヒドロキシプロリン流出量が多くなった.食材を容器内に密封し加熱するレトルト殺菌では,ドリップの逃げ場が無いため,エビから出たドリップが自身の筋繊維結合タンパク質であるコラーゲンを加水分解して,組織を脆くさせると考えられた.
- 著者
- 竹内 友里、高橋 英史
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書,28,65-71(2010)