果実類缶詰中の重要品目であるミカン缶詰について、その製造条件が、如何にスズの溶出に影響があるかについて、12カ月の室温貯蔵条件を含めて、検討を加えて見た。その結果、
1.内容総量が多く、すなわち缶内上部空隙量が少なく、そして巻締時の真空度を強く取った試料群のスズ溶出量が明らかに少ない結果を得た。
2.使用した缶材、電気メッキブリキ群とホットディップブリキ群について比較検討した結果、電気メッキブリキ群の方がスズの溶出量は少ない結果を得た。
また、ミカン缶詰の製造時に使用された缶詰用水中の硝酸根の量につきスズの溶出量との関係を12カ月の室温貯蔵条件も含めて、険討を加えて見た。その結果、
1)缶詰用水中の硝酸根の量が少ない程、スズの溶出量は少くオレンジジュース缶詰その他と同様の結果を得た。 ただし、直後試験区のデーター群のみ異なる結果となっている。
2)使用缶材については、缶の天地に防食塗装を施した群のスズの溶出量が最も少ない結果となっているが、缶胴部の腐食が他より特に激しく見られるため推奨することは出来ない。むしろ、次位に属した電気メッキブリキ群が適当と思われる。
- 著者
- 小田久三,沖永ミドリ
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,60-73(1967)