20.ナリンギナーゼによる夏ミカン脱苦味の研究-Ⅳ
人甘併用品に対する効果

人甘併用品にナリンギナーゼ剤を応用した場合に全糖品と同様に十分脱苦味できる条件を選ぶ目的で試験した結果次のことが認められた。

1.人甘併用品では全糖品に比べ殺菌中の液汁のpHの変化、缶中心温度の上昇の速度が大きく殺菌条件は全糖品よりも若干低減できる。

2.サイクラミン酸塩のみを使用した人甘併用品では殺菌条件を若干低減しても十分な脱苦味効果は得られない。

3.サイクラミン酸塩はある条件下(低pH域または高温時)ではナリンギナーゼ活性に対し、何か阻害的効果を示し、その効果は不可逆的な反応らしい。

4.サイクラミン酸塩以外の人工甘味料であるサッカリン、ズルチンはナリンギナーゼ活性にほとんど影響しない。

5.サッカリンを甘味度としてサイクラミン酸塩の等量以上使用して缶詰を製造すれば十分に脱苦味された製品が得られる。ただし風味の点を考慮すればサッカリンとサイクラミン酸塩を等量使用するのが最も好ましいと考えられる。

著者
下田 吉夫、奥 正和、森 大蔵、澤山 善二郎
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,148-158(1967)

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