32.清酒醸造工程中の核酸系成分および関連酵素系について
(第3報)酒母と醪の核酸系成分と核酸分解酵素系について

1)酒母、醪の核酸系成分および核酸関連酵素系の経時的変化、ならびに粗酵素液の諸性質を調べつぎの結果を得た。

2)酒母のリン成分の中で酸可溶牲リンは経時的に増加し、RNAリンは減少した。塩基、ヌクレオシドは増加した。

3)醪のリン成分、核酸系成分の変化は酒母と大差がなかった。塩基、ヌクレオシドにはグアニン系、アデニン系物質の外にシトシン系物質を検出した。

4)酒母のRNase活性はフクレ後までやや増加し、以後減少した。PDase、PMase活性は次第に減少した。醪のRNase活性は本泡末期頃までやや増加し、以後減少した。

5)酒母および醪の粗酵素液のRNase活性の最適pHは4.0と7.0〜8.0付近、PDaseは3.0〜4.0、PMaseは4.0〜5.0にあり、最適温度はRNase、PDase活性は60℃、PMaseは50〜55℃であった。RNase活性は100℃、10分間加温で活性が残るが、PDase、PMase活性は70℃で失活した。またRNaseはCu++、Zn++、PDaseおよびPMaseはNaF、Na2HPO4により阻害された。

6)酒母および謬の粗酵素液を酵母RNAに作用させるとGMP、CMP、AMP、UMPを生成し3′-型が多かった。またATPに作用させるとADP、5′-AMP、5′-IMPを生成し、5′-AMPに作用させると塩基、ヌクレオシドと5′-IMPを生成した。

著者
毛利 威徳、足立 有、柏原 純
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,203-214(1971)

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