市販農産缶詰の一部の製品では,内容物の変色防止や保水性の向上のため,食品添加物であるリン酸塩や縮合リン酸塩が使用されている.食品衛生法では添加限度が決められていないため,最終製品中の残存量が人体に影響を与えないかと消費者は懸念している.
これまではリン酸塩や縮合リン酸塩の分析は難しかったが,イオンクロマトグラフィーの発展により,それらをより簡便に分析できるようになった.そこでイオンクロマトグラフを用いて,数種の生の農産物と市販農産缶詰中の各種リン酸イオン濃度を測定した.
実験に用いた供試品全てに,次亜リン酸イオンとオルトリン酸イオンが含まれていた.供試缶詰の中にはトリポリリン酸イオンやテトラポリリン酸イオンが含まれていた缶詰もあった.しかし,一缶当たりに含まれる全リン酸イオン濃度は人体に害を与えるレベルではなかった.
- 著者
- 高橋 英史、稲田 有美子、安福 美幸、森 大蔵
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,20,7-15(1994)