好酸性菌がバレンシアオレンジジュース中にどの程度存在し,またこの中で増殖するにはどのような条件が必要かを検討した.
4社の市販紙容器詰バレンシアオレンジジュース中には好酸性菌が1ml当たり10-100個存在し,またバレンシアオレンジ冷凍濃縮果汁にも存在していた.そのため,この果汁はほとんど好酸性菌に汚染されていると考えられる.
好酸性菌を摂取した紙容器詰バレンシアオレンジジュースを35℃で保存すると,アルミ箔のない容器詰では2日間で変敗するが,アルミ箔のある容器詰は好酸性菌の増殖が弱いことが認められた.これは増殖において酸素が大きく影響するからである.
好酸性菌を接種したバレンシアオレンジジュース缶詰の場合は,20℃以上の保存で好酸性菌は僅かに増殖するが,缶内の酸素は非常に少ないので100倍以上には増殖しない.従って,pH,色調,匂いなどの変化はほとんど無接種区と同じであった.
- 著者
- 池上 義昭、遠田 昌人、松井 智江、中川 薫
- 出典
- 東洋食品工業短期大学・東洋食品研究所研究報告書,21,117-122,(1996)