缶詰ミルクコーヒー製品において,ゲル状凝固物の発生問題が生じた.対象製品の処方上の特徴は,コーヒーの含量が高いことであった.凝固物の外観は,カゼインの酸による沈殿物とは異なっていた.分析データから,凝固物はα-およびβ-カゼインがカルシウムと結合したものであることが示唆された.そしてその原因は,κ-カゼインとβ-ラクトグロブリンの結合によるカゼインミセルの不安定化であると推察した.我々は,この凝固物を試験管内で再現することに成功した.また,レトルト殺菌機ののぞき窓から,殺菌中のミルクコーヒーの変化を観察した.その結果,凝固物は殺菌工程の初期段階で形成されることを確認した.
- 著者
- 田辺 利裕、青山 好男、中西 律子、村井 恵子
- 出典
- 東洋食品工業短期大学・東洋食品研究所研究報告書,24,167-174,(2002)