温州ミカン缶詰(砂じょうとシラップ)の特徴的香気成分であるリモネンとリナロールは,缶詰製造により減少した.リナロールは,市販の4種類の温州ミカン缶詰のいずれにも存在しなかった.リナロールは貯蔵中に残りにくい成分である.本研究の目的は,外果皮(フラベド)のコールドプレスオイルから調製したエッセンスの添加により,温州ミカン缶詰の香気を改良することである.エッセンスは,温州ミカンエッセンス(ESM)およびバレンシアオレンジエッセンス(EVO)の2種類を用いた.エッセンスを添加した温州ミカン缶詰では,37℃で4ヵ月間貯蔵後もリナロールは高濃度で保持された.いずれのエッセンスでも同様の効果が得られた.さらに,エッセンス中のα-ピネン,リモネン,シトロネロール,ペリールアルデヒド,1-オクタノール,ヘキサナール,オクタナール等の成分が,貯蔵後も,温州ミカン缶詰に残存した.その結果,温州ミカン缶詰に特徴的なフレーバーが高められた.2点嗜好試験法において,エッセンス添加温州ミカン缶詰が,エッセンス無添加の温州ミカン缶詰よりも,1%の危険率で有意に好まれることが分かった.ESM添加の温州ミカン缶詰とEVO添加のそれでは,好みに違いはなかった.
- 著者
- 高橋 英史、隅谷 栄伸、稲田 有美子、森 大蔵
- 出典
- 東洋食品工業短期大学・東洋食品研究所研究報告書,25,35-47,(2004)