17.透明パウチ詰パイナップルの褐変原因調査

透明パウチ詰パイナップルでは、保存中の果肉褐変が問題となる。褐変には、酵素と糖やアスコルビン酸を基質としたメイラード反応が影響すると考えられる。褐変の原因を明らかにするため、果肉成分との関係を調べた。

生の果肉中のポリフェノールオキシダーゼとプロテアーゼの酵素活性を測定した。ポリフェノールオキシダーゼ活性は検出されなかった。プロテアーゼ活性は、40℃で最大活性を示し、50℃まで安定であった。パウチ詰パイナップルのプロテアーゼは、F85=12.6の殺菌で失活した。これら酵素は褐変に関与しないと考えられる。

果肉中の2種類のメイラード反応中間体の濃度を測定した。アスコルビン酸由来のメイラード反応中間体であるフルフラールの濃度は低く、アスコルビン酸の褐変への関与は考えにくい。六炭糖由来のメイラード反応中間体であるヒドロキシメチルフルフラールの濃度は、果肉のΔa*と高い相関(相関係数0.97)を示した。透明パウチ詰パイナップルの保存中の褐変は、六炭糖を基質としたメイラード反応が主原因であることが示唆された。

著者
井上 竜一、高橋 英史
出典
東洋食品研究所 研究報告書,29,135-140(2013)