カキ果実の一部は出荷されず利用されていないと考えられ,また摘果された幼果も廃棄されている.これら未利用果実を有効利用するため,カキに特徴的な脂肪酸であるcis-バクセン酸 (C18:1,n-7) に着目した.cis-バクセン酸を特徴とした脂質の利用に最も適した品種を探索するために,18品種のカキ幼果・成熟果の脂肪酸組成を分析した結果,全品種で幼果に比べ成熟果の方が,総脂肪酸中のcis-バクセン酸比率が高く,含量も多かった.cis-バクセン酸を特徴とした脂質の利用には成熟果が適していると考えられる.分析した18品種の成熟果の中で「四ッ溝」はcis-バクセン酸含量が最も多く,「松本早生富有」はcis-バクセン酸組成比が最も高かった.これら結果から,cis-バクセン酸はカキが成熟すると増加し,cis-バクセン酸に着目した利用には「四ッ溝」,「松本早生富有」が最適なことが分かった.
- 著者
- 甲木 孝弘, 井土 良一
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 32, 15-19 (2018)