23.米麦主要成分である炭水化物の構成が糖代謝に与える影響の検討

2019年度研究助成 (2020年度研究実施)

炭水化物を10% ショ糖 (S) もしくはショ糖をコーンスターチに置換 (NS) した2種類の精製飼料AIN93G (PFC比* =20 : 25 : 55) を,C57BL/6N雄性マウスに自由摂取させ,経口ブドウ糖負荷試験と呼気ガス分析・活動量計測,肝臓及び精巣上部脂肪組織のRNA発現変動を解析し,短期間の代謝応答を中心に,マウス代謝機能への多糖類摂取の影響を検証した.
NS群は,糖負荷試験で血糖上昇が緩やかで,長期摂取により血糖降下作用を有する傾向が示唆された.またS群飼料の長期摂取で,経時的なエネルギー消費量の減少が認められた.NS飼料の摂取2日間で多くの変動遺伝子が確認された.肝臓では糖代謝疾患,肝臓障害の抑制,炭水化物代謝,脂質合成の亢進が予想される結果を,脂肪組織では脂肪細胞の炎症惹起を抑制する機能を有する可能性が示唆された.
以上のことから,炭水化物源が消化性でんぷんのみの中脂肪飼料の摂取は,少糖類を含む中脂肪食と比較して,その影響を緩和する可能性が示唆された.病的状況を除いては必要以上に米などの炭水化物源を忌避する必要はないように考えられる.

* タンパク質(P),脂質(F),炭水化物(C)のエネルギー比率
文責:(公財)東洋食品研究所 事業推進部

所属
地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所 食品機能性評価グループ
著者
嶋田 耕育
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 34, 183-195 (2022)

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