24.ヒト腸管オルガノイドおよび単層上皮細胞を活用した食品成分の機能解明

2019年度研究助成 (2020年度研究実施)

小腸上皮は様々な栄養成分の取り込みに加え,食事由来の遊離脂肪酸をトリアシルグリセロールに再合成し,カイロミクロンとして末梢組織に運搬するという重要な脂質代謝を司る.本研究では従来の細胞株よりも生理的なヒト小腸オルガノイドを用いて,小腸上皮の脂質代謝に関する解析を行った.ただしオルガノイドは管腔側が三次元構造体の内側領域に相当するため,本研究ではTranswellに単層化し,底面側が基底膜側,上面側が頂端側となるように細胞の極性を持たせた上で評価を実施した.
ヒト小腸オルガノイドを単層化後,脂肪酸の一種であるオレイン酸を負荷したところ,基底膜側へのApoB-48分泌量(カイロミクロン量を反映)およびトリアシルグリセロール量が増加した.カイロミクロン分泌の抑制は脂質異常症の改善,予防に繋がることが期待できるため,食品成分のスクリーニングを行った結果,乳酸菌由来の脂肪酸代謝産物がApoB-48分泌を抑制することを見出した.さらに細胞内ApoB-48タンパク質量を定量した結果,脂肪酸代謝産物を処理することで減少することが示された.以上の結果より,脂肪酸代謝産物は細胞内ApoB-48発現量を減少させることで,カイロミクロン分泌を抑制する機能を有すると考えられた.

所属
東京大学大学院 農学生命科学研究科
著者
高橋 裕
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 34, 197-200 (2022)

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