目的
柿(Diospyros kaki)は古来よりなじみ深い果物ですが、他の果実と比べると生食や干柿以外の応用が難しい食材であるとされています。そこで、廃棄果実を含めた柿の有効活用手段として、発酵に注目し検討を行ってきました。これまで、黒麹菌や乳酸菌を用いた富有柿幼果の発酵において抗肥満に関与するβ-リパ-ゼ阻害活性あるいは血圧上昇抑制に関与するアンジオテンシン変換酵素阻害活性(ACE阻害活性)が増強することを明らかにしています1)。そこで、本研究では新たに甘柿および渋柿の成熟柿を対象として黒麹菌を用いた発酵を行い、β-リパーゼやACE阻害活性、ポリフェノール量およびDPPHラジカル消去活性に対する影響を調べました。
結果
富有柿成熟果では、発酵後β-リパーゼ阻害活性で弱い阻害活性(IC50=6390.5 μg/ml)が見られましたが、幼果発酵物と比較すると弱い阻害活性の増加にとどまりました(表1)。また、ACE阻害活性、ポリフェノール量およびDPPHラジカル消去活性において発酵後の顕著な活性の増加は見られませんでした。これらの結果は富有柿幼果を原料にしたときとは大きく異なっていました。一方、白皮柿の成熟果では、リパーゼ阻害活性とACE阻害活性で発酵にともなう阻害活性の増加が見られました(表2、表3)。また、ポリフェノール量やDPPHラジカル消去活性についても増加傾向にあり富有柿幼果の発酵物とは相違が見られました(表4、表5)。これらのことより、黒麹菌発酵は渋柿の成熟果が有する抗肥満などの機能性を増強することが明らかになり、発酵は渋柿成熟果の機能性増強にも有用であることが示唆されました。
表1 富有柿成熟果発酵物のβ-リパーゼ阻害活性
表2 白皮柿成熟果発酵物のβ-リパーゼ阻害活性
表3 白皮柿成熟果発酵物のACE阻害活性
表4 白皮柿成熟果発酵物のポリフェノール量
表5 白皮柿成熟果発酵物のDPPHラジカル消去活性