蜜柑果汁を缶詰に製造するにあたって、果汁を熱間満注詰にすることが、冷間定量詰としたものに比較して、缶材ブリキ板の腐蝕の制御に有効であることを確かめ、上記両種缶詰法によって試製の缶詰を室温に17ケ月間貯蔵して置いたのちに、腐蝕の進度を判断するのに必要な諸量の測定を行い、比較して見た。その結果
1.冷間定量詰法による缶詰の保有真空度の平均値が15インチであったが、熱間満注法よる缶詰の保有平均真空度が22インチあって、この実験実施の当初満注詰法について危惧した所謂、 'Hydrogen reservoir'theoryは問題にはならなかった。
2.錫の腐食溶出制御のうえにおいて熟間満注詰は比較的長期間の貯蔵後においても高度に有意な効果を示した。
3.鉄の腐蝕は極めて軽微で、両種方法による差異が認められなかった。
4.缶詰内面に現出の灰黒色汚班は熱間満許詰において少ない。
- 著者
- 志賀 岩雄
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,78-90(1959)