13.その三 カンショ缶詰についての測定結果

つぶしカンショ缶詰の熱伝達速度について4号缶ならびに平1号缶を使用して測定を行った。これらの缶詰は平均約65%の水分を含有し、主として炭水化物からなるのり状体を内容物とする缶詰である関係から熱伝導の支配的な熱流のみられる缶詰の典型的なものと考えられた。4号缶での測定は、2種のレトルト温度(110℃、100℃)を使用した。直線の勾配fhの平均値は、殺菌温度の相違にかかわらすほぼ一致している。4号缶と平1号缶とについて得られた加熱曲線の勾配fh と、両缶型について算出されたd2fnとは比例関係が認められた。温度伝導度kは、110℃と100℃の加熱温度で測定した結果、4号缶の平均値は、それぞれ0.095と0.096 cm2/minとよく一致している。また平1号缶で加熱温度110℃での測定で得られたk値は0.095cm2/minでやはり上記の数値とよく一致している。4号缶で得られたkの最小値は水の値にはなはだ近い。4号缶で得られたjの平均値は1.51で、理論値よりも0.53低いが、OIson&Jacksonのh/dとjの実験値との関係曲線に、この実験結果をあてはめてみて、かなりよく一致することが認められた。缶詰つぶしカンショはその温度伝導度kが水に近く、熱伝達速度が極めて遅いので、4号缶のようなあまり大きくない缶型を使用しても、それを殺菌するには230°Fで2時間というような長時間加熱の必要であることが示された。

著者
志賀 岩雄
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,139-153(1959)

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