12.その二 脱水マツタケ缶詰についての測定結果

無注液の脱水マツタケ缶詰の熱伝達速度の測定を行い、その結果得られた加熱曲線の性質について検討し、またその実地の適用性について検討した。F。=0.17に相当する加熱殺菌(106min/115℃)の施された試験缶詰中から4.2%に相当する膨脹缶詰が発生し、F。価の低下と共に膨脹缶の発生率が増加した。

F。=0.45、1.03およびそれ以上のF。価で加熱された試験缶詰中からは、膨脹缶の発生はなかった。しかしCl.botulinumの熱に対する性質(Z=18○F.F。=2.78分)、および脱水マツタケ缶詰の膨脹缶詰から分離したD菌の熱に対する性質(Z=16.4○F.F。=1.35分)から考えて、F。価の低くすぎるものは安全とは言えない。すなわち問題菌によってある濃度に汚染された缶詰では、殺菌加熱のF。価の低い缶詰は変敗する危険性がある。推計学上から言っても、小数の缶詰の温室検査で、膨脹缶詰が発生しなくとも、多数缶詰を対象とした場合、上の温室検査結果から、膨張缶詰発生の可能性がないとは言えず、必要なF。価を満足させるに十分な殺菌加熱程度を採用すべきである。主として熱伝導による熱流の支配的な非酸性内容物であって、しかも大型缶を殺菌するには、比較的高温で、いかに長時間の加熱を必要とするものであるかが以上によって示されたものと思う。

著者
志賀 岩雄
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,126-138(1959)

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