育児食缶詰の熱伝達速度の測定結果について報告する。供試の内容物は約80%の水分を含有したのり状体で、熱伝導の支配的な熱流のみられる缶詰の1例として好個のものであると考えられた。使用缶型は6号缶である。
供試の缶詰は6号缶というような小型缶であったにかかわらず加熱曲線の勾配fhは平均32.2分というような高い値を示し、熱伝導の支配的な缶詰の持徴がでているとみられる。
温度伝導度kは平均0.094cm2/minを示し、前記のつぶしカンショ缶詰のkの平均値と一致している。そしてこの最低値は0.090 cm2/minで水のそれに近い。jの実験値は平均1.21で理論値に比較してかなり低く、Olson&Jacksonのh/dとjの実験値との関係曲線に照し合せてみてもなおやく0.3程度低い。しかしレトルトの温度上昇時間をそのまま殺菌加熱時問に加算して求められたjの値は理論値より高くなるのでレトルトの温度上昇時間を殺菌温度での加熱時間に加算する加算率に問題があるように考えられる。
熱伝達速度の遅いことでは典型的とみられ、しかも非酸性の、この内客物の缶型では6号確というかなりの小型缶であるにもかかわらず、その殺菌には110℃で89分という長時間の加熱の必要であることが示された。
- 著者
- 志賀 岩雄
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,154-160(1959)