前報でPsalliota bispora、Cortinellus shitake、Pholiota nameko、の菌体生育にともなう各種有機酸の消長を見た。茸類は培養中に数種の有機酸を生成し又分解した。培地に中和剤を添加して培養すれば殆んど蓚酸のみを蓄積した。蓚酸生成量の大きいシイタケ菌は勿論の事他の二菌も糖の代謝によって各有機酸を経て蓚酸を生成更に分解される事がほぼ推論されるので報告する。
1.シイタケ菌は培養中に蓚酸を大量に蓄積するが、これはマッシュルームやナメコ菌に比較して蓚酸分解力が小さい事に原因する。
2.糖からの有機酸の生成はシイタケが蓚酸をよく生成するに反してマッシュルーム、ナメコ菌ではコハク酸を主として生成した。
3.茸類は種々の有機酸から蓚酸を生成するがシイタケは特に酢酸からの蓚酸の生成量が多く、酢酸・蓚酸の経絡の存在が推定された。
4.シイタケ菌の蓚酸生成の条件はpHが徴酸性より中性に近づく程、糖濃度は1%程度、糖源としてはグルコース,フラクトースが秀れていた。
- 著者
- 橋本 一哉、磯部 信昭、高橋 善次郎
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,222-226(1965)