きのこ熱水抽出(煮出し)において、自己消化が行なわれ、RNAが分解するとともに、5′または3′-ヌクレオチドが生成蓄覇されることが認められた。すなわちシイタケではpH6〜9で5′-ヌクレオチド、pH4では3′-ヌクレオチドが蓄積された。これが煮出しにおける5′-GMPなど5′-ヌクレオチド生成の原因と考えられる。マッシュルームでもRNAの分解に伴ってPh4附近では3′-ヌクレオチド、pH8では5′-ヌクレオチドの蓄積は認められるが、水による煮出し条件(pH6附近)ではRNAの分解とヌクレオチドの生成はいずれも少なかった。このようにきのこの種類によって、pHの相違によるヌクレオチド量の相違が認められた。
一般にきのこの煮出しにおいては、前報も含めて、きのこの種類に応じて、ATPからの分解とRNAの分解が認められ、酵素系の特性に応じて生成蓄積するヌクレオチドにも特徴があるものと考えられる。
- 著者
- 毛利 威徳、橋田 度、志賀岩雄
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,263-270(1965)