32.茸類の生化学的研究-Ⅴ
茸菌糸の液内培養に就て

茸類の或る種のものは料理の珍味として讃美されており,特に蛋白及びビタミンの給源として興味探いものである.
我々は茸類菌糸体の大量生産方式に近ずけるために,菌体の生理研究を主として我国特産のシイタケ,ナメコを平行しつつ実験を行い2,3の知見を得た.

1.酵母エキスの添加によって菌体の生育は促進されたシイタケでは過剰の酵母エキスの添加は菌体の生育を阻害した.

2.菌体の含有蛋白量は、マッシュルームが35%,ナメコが42%,シイタケが40%であった.

3.最適pHはマッシュルーム6.0,ナメコ6.5,シイタケ5.5であるが,ナメコ,シイタケでは巾広いpH域を有し5から6.5で殆んど同様によく生育した.

4.最適糖濃度はマッシュルーム2%,ナメコ,シイタケは3%であった.

5.総B2量はマッシュルーム,ナメコでは培養中70、90r/g生成されるが,シイタケでは極めて微量であった.

6.菌体の有機酸組成は子実体に比して少く又含有の割合も異なり特にリンゴ酸の量が少ない.

著者
橋本 一哉、磯部 信昭、高橋 善次郎
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,227-233(1965)