マッシュルーム、しいたけ、まつたけなど約10種の食用きのこ類を対象にして食品化学的見地から5′-ヌクレオチド類の分布を調べた。5′-ヌクレオチドの定量はDowex1×8を用いるカラムクロマトグラフィによった。
マッシュルームおよび生しいたけ煮出し液の各々の画分の同定を行ない、5′-AMP、5′-UMPおよびしいたけではこれらに加えて5′-CMP、5′-GMPの存在を確認した。一般にきのこ類ではこれら4の5′-ヌクレオチドが普遍的に認められたが、5′-IMPおよび2′、3′ヌクレオチドはほとんど見い出されなかった。乾しいたけで抽出法を比較したところ100℃で煮出す方法が冷時、過塩素酸または硫酸で抽出する方法よりも2〜3倍量が高かった。また、しいたけの乾したものと生のものを一定乾物量当りで比較すると乾した場合は、生の場合の約2倍量であった。きのこの遊離5′-ヌクレオチド類は蔬菜類に比べると相当に多いが、それでもきのこのRNAの約1/10量に過ぎないことが認められた。
"乾しいたけの味"といわれる5′-GMPは、しめじ、まつたけ、はつたけらにも見いだされ、食用きのこに共通の旨み成分と考えられる。
- 著者
- 橋田 度、毛利 威徳、志賀 岩雄
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,234-242(1965)