テンパー度の高い薄ブリキ板を缶胴に使用し、殺菌加熱および冷却時に受ける内外圧、あるいは輸送中の衝撃などに耐得るようBeadを施した空缶の耐内容物性について、従来のBeadのない空缶を対照として比較検討を試みた。使用缶型は内面無塗装の200g詰果汁缶で、パインアップル・ジュースならびにオレンジ・ジュースの2種類の内容物について実施し、つぎのような知見を得た。
1.真空度保持は試験缶詰が対照缶詰よりも劣ることはない。
2.pHおよび内容物の状態は両缶種間にほとんど差異がない。
3.缶胴にBeadを施した試験缶詰はBeadのない対照缶詰よりも加工変形部が多いため、電気化学的な腐食が促進され、その結果、鉄、錫、など金属溶出量が著しくなるのではないかと懸念されたが、そのような傾向はみられず、溶出鉄量は両缶種間にほとんど差異はなく、溶出錫量は37℃貯蔵区において試験缶詰が対照缶詰よりもかえって低い値を示した。
4.缶胴にBeadを施しても外観上、その部分に局部的な腐食の増大は認められず、Beadを施さないFlatな場合との間において差異のみられるような腐食の進行状態が観察されなかった。
5.缶胴にBeadを施した空缶の耐内容物性はBeadのない空缶の耐内容物性と略同様、ないしは若干すぐれているともみられるような結果を与えた。
- 著者
- 木村 圭一、児島 宏枝、衣裴 寿子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,84-93(1967)