14.缶詰食品中におけるトリメチルアミン・オキシドの変化

缶内面に対して著しく腐蝕性であることが知られているトリメチルアミン・オキシドの缶詰食品内における変化と金属溶出との関係を明らかにするため、天然にはTMAOを含まないことが知られているフナを用い、種々の濃度のTMAOを含有せしめたトマト漬けフナ缶詰を試作し、貯蔵期間中のアミン類の生成量と金属溶出量の関係を追跡した。

1.TMAO低濃度の場合、主としてTMAが生成し、TMAOによる金属溶出はみられない。食品中においてTMAOが単純に還元されるものと考えられる。

2.TMAO中濃度(45mM)の場合、TMA生成が優勢であり、このときスズ、鉄両方のかなりの溶出がみられることから、TMAOの作用は合金面まで及んだものと考えられる。

3.TMAO濃度が高い場合(90mM)、TMA生成は3カ月貯蔵でほとんど停止するのに比し、DMAの生成が激しく進む。また、スズの溶出もほとんど止まり、代って鉄の溶出のみが著しい。

4.全TMAO濃度、全貯蔵期間を通じて、TMAとDMAの生成量の和はTMAOの消失量に等しいことから、TMAOのTMA、DMA以外のアミンヘの変化は考えられない。

5.トマト清フナ缶詰中におけるTMAOの変化と金属溶出との関係は模式のようになると考えられる。

著者
大塚 滋、富永 哲彦、長田 博光、加藤 有代
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,98-101(1967)

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