42.茸類の生化学的研究-Ⅸ
トレハローズの分解について

1.子実体の生長期間を通じてpileusの水分含塩は一定であるがstipeでは完熟後は減少した。

2.マンニットは15-20%を示した、トレハローズは3-7%で完熟期に急速に消費された。

3.マッシュルームトレハラーゼはpH4.4、温度35〜45℃に最適を 示した。

4.当酵素のpHに対する安定性は4.4〜6.0であり、温度に対する安定性は45℃、5分の処理では影響はないが、50℃以上では急速に不安定となり、70℃で完全に失活した。

5.化学量論的にはトレハローズは当酵素で加水分解されて、2当量のグルコースを生成した。

以上、貯蔵物質として子実体中に存在するトレハローズは子実体の成熟と共に共存するトレハラーゼにより分解されて胞子形成、その重要な生理作用に必要なエネルギー源として供給されるものと推察される。

著者
橋本 一哉
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,327-333(1969)

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