カツオ缶詰製造における蒸煮液を食品として利用するために,その中に含まれている人体に有害な金属である亜鉛,銅,ヒ素をヴイスキングチューブ,PVAホロウ・ファイバー・ダイアライザー,電気泳動ならびにフィチン酸カルシウムを用いて除去することを試みた.また煮汁中に含まれている金属の形態を知るためにイオン交換樹脂を用いて調べた.
カツオ煮汁中にはたんぱく質,遊離アミノ酸がかなり多く含まれているが,人体に有害な亜鉛,ヒ素も多く含まれている.フィチン酸カルシウムを5%の割合で添加し,攪拌したのち部分加水分解するとヒ素を除いて亜鉛,鉛がかなり除去できた.部分加水分解後PVAホロウ・ファイバー・ダイアライザーで9時間透折すると,それらの大部分は除去できたが,同時にたんぱく質,遊離アミノ酸も著しく除去された.
煮汁中の金属の形態は,銅は酸性型,カドミウムは中性型,ヒ素は主として酸性型,亜鉛は54%が酸性型,26%が中性型,残りの20%が塩基性型であった.
- 著者
- 長田 博光
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,14,48-57(1981)