イチゴ(Fragaria × ananassa Duch.)のヘタ離れ性における遺伝率,ならびに'ベニヒバリ'が遺伝子資源として後代のヘタ離れ果率に及ぼす影響を評価した.'ベニヒバリ'を含む3品種を用いて総当たり交配を行い,そのF1実生についてヘタ離れ果率,その他の果実特性を調査した.
F1のヘタ離れ果率の平均値は中間親の値に近似していた.ヘタ離れ果率は果重およびアントシアニン含量と負の相関があった.
ヘタ離れ果率の遺伝率を(1)F1と親の分散の比較,(2)中間親とF1との回帰,および(3)母親および父親因子の分散分析,により推定した.推定された広義の遺伝率はそれぞれ0.64,0.90および1.15となった.いずれの場合も遺伝率は高い値であったことから,ヘタ離れ性は主に遺伝効果によって決定されると考えられた.さらに,分散分析の結果から,ヘタ離れ果率は相加遺伝効果だけでなく,優性遺伝効果の影響を受けることが示された.
F1におけるヘタ離れ果率の頻度分布は親品種よりも広くなり,特に'ベニヒバリ'を親とした組み合わせでは高い方に分布が広がる傾向がみられた.'ベニヒバリ'はヘタ離れ性において優れた遺伝子資源になると期待された.
- 著者
- 高橋 徹、森 大蔵、奥 正和、後藤 隆子
- 出典
- 東洋食品工業短期大学・東洋食品研究所研究報告書,24,9-17,(2002)