6.柿成熟果および幼果へた抽出物における機能性の探索

柿のへたは「柿蔕(シテイ)」と呼ばれ,しゃっくり止めとして用いられる漢方薬である.しかしそれ以外の効能についてはほとんど知られていないため,成熟果および幼果へたについて,成人病に関係する新たな機能性について調べた.へた由来エタノール抽出物はα-グルコシダーゼ阻害,β-リパーゼ阻害,アンジオテンシン変換酵素阻害活性を示した.α-グルコシダーゼ阻害活性ではエタノール画分で富有柿幼果がもっとも高い阻害活性を示し,IC50=2.5 mg/mlであった.β- リパーゼ阻害活性では次郎柿水画分が最も高い阻害活性を示し,IC50=1.7μg/mlであった.アンジオテンシン変換酵素阻害活性は,富有柿成熟果にてIC50=300.2μg/mlと最も高い阻害活性を示した.中国産柿蔕,富有柿,次郎柿へた成分としてオレアノール酸,ウルソール酸,ベツリン酸を同定し,それらの化合物はβ-リパーゼ阻害活性のみ寄与することを明らかにした.α- グルコシダーゼ阻害,アンジオテンシン変換酵素阻害活性には他の化合物の寄与が示唆された.これらのことより,柿へたは成人病予防を目的とした新たな機能性素材となる可能性が示唆された.

著者
折居 千賀
出典
東洋食品研究所 研究報告書,30,41-47(2014)