01. 極性物質組成に着目したイチジク果実エキスの調製方法

ピペコリン酸 (PIP)とトリゴネリン(TRG)はイチジク(Ficus carica L.) 果実に含まれる極性物質で,健康への寄与が期待される.そこで,PIPとTRGを多く含み,かつ夾雑物が少ない抽出エキスの調製方法を検討した.抽出溶媒のエタノール濃度,酸 (酢酸,クエン酸,乳酸,アスコルビン酸,グルコン酸,ギ酸,コハク酸,酒石酸,リンゴ酸)またはアルカリ(炭酸水素ナトリウム,炭酸カリウム)の添加,吸着剤 (シリカ,珪藻土,ベントナイト,ポリビニルポリピロリドン,活性炭)が抽出液の成分濃度に及ぼす影響を調査した.結果,グルコン酸を0.5 ~ 5%(v/v)添加した水が,以下4つの特徴により最も優れた溶媒であった.(1) PIPとTRG濃度に影響しない.(2) pHを4.0以下に下げられる(殺菌加熱条件の軽減が可能).(3) 最終糖化生成物を生じやすいアルギニンとリシンの抽出量を低減できる.(4) 食味への影響が小さい.一方,抽出液の糖濃度は今回試験した溶媒の影響を受けなかった.また,今回試験した吸着剤の中にはPIPとTRGの濃度に影響を及ぼさずに糖濃度を低減できるものはなかった.

著者
沖浦 文, 高橋 徹
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 33, 1-9 (2020)