2.かん詰の内面腐食に関する研究-Ⅰ
オレンジジュースかん詰のスズの異常溶出と調合用水の水質との関係

オレンジジュースかん詰めスズの異常溶出原因を究明するため、調合に用いられた井水の水質について化学試験を行なうとともに各種の再現試験かん詰を製造のうえ検討を行ないつぎのことが明らかになった。

1.事故の発生を認めた工場の井水と、上水との水質の最も著しい相違は硝酸イオン量であり、その含有量は採水時期によりかなりの相違が認められた。

2.再現試験かん詰の溶出スズ量は調合用水として井水を用いた場合で、しかも硝酸イオン量の多い場合に著しく増加し、かん内面は全体的に腐食されるが、真空度の減少は認められない。

3.この異常溶出は3社のブリキ板の品質の相違にはほとんど影響されない。

以上のことからスズの異常溶出原因は調合用水として使用した井水中に硝酸イオン量が多量に存在していたために起こったものである。

著者
堀尾 嘉友、岩本 喜伴、小田 久三
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,11-18(1965)