10.缶詰食品中のクロムについて-Ⅱ
無塗装クロム処理鋼板使用缶詰の内面腐食

今回は、比較的腐食性の強いあじトマト漬、鯨焼肉、フルーツみつ豆の3種類を選び、水素膨張缶となり、内容物の保存性を失う状態においてクロム処理鋼板からのクロム溶出量がどのように増大するかを見るため、無塗去のクロム処理鋼板を使用して試験缶詰を製造し、試験を行なった結果を報告する。

1)無塗装クロム処理鋼板からのクロム溶出量は、塗装クロム処理鋼板及びブリキ缶より若干多い。しかし、その溶出量は極微量であり、内面無塗装の電気メッキブリキ使用缶詰と同程度であった。

2)無塗装クロム処理鋼板使用缶詰が水素膨脹缶となり、食品の保存性を失う状態においてもクロム量は、あじトマト潰で0.16〜0.12ppm、鯨焼肉で0.08〜0.12ppm、フルーツみつ豆で0.04〜0.08ppm と極微量であった。

3)無塗装クロム処理鋼板使用缶詰では鉄溶出量がその内容物の腐食度に応じて増加する。あじトマト潰、鯨焼肉では、37℃恒温室に3ヶ月、フルーツみつ豆では1ヶ月貯蔵すると鉄溶出量は100ppm以上となり水素膨脹缶となった。クロムの溶出量が増加する傾向を示した時には、すでに多量の鉄が溶出し、水素膨脹缶となり、缶詰としての商品価値はなくなっていた。

4)A社B社のクロム処理鋼板のクロム溶出量、鉄溶出量を比較しても、その差は認められない。

著者
岩本 喜伴、廻 清子
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,58-63(1965)